文=マイケル・フィンケル 写真=マルコ・グロブ ダニエル・キッシュは先天的な目の病気(網膜芽細胞腫)があったため、生後13カ月までにその両眼を失っていた。ほどなく彼は「舌打ち音(クリック音)」を立てながら動き回るようになった。47歳になった今では、主にエコーロケーション(反響定位)を頼りに行動している。そう、コウモリのように。 ――人間でもエコーロケーションができるのですか? 舌打ち音を立てると音波が放たれ、周囲にある物体に当たってかすかな反響が返ってきます。それを耳でとらえて、脳でイメージに変換するんです。いわば、周囲の環境と対話しているようなものですよ。 ――心の目には、どんなイメージが映るのでしょうか。 舌打ち音を立てるたびに、弱いカメラのフラッシュが焚(た)かれる感じです。それを元に半径数十メートルの三次元イメージを組み立てます。近くなら直径2センチの細い柱も感知できるし、車や茂み