「矢野論文」があぶり出した与野党オール「バラマキ合戦」の無責任 国債は打ち出の小槌ではない――「たたかれ台」となった健全財政への直言 原真人 朝日新聞 編集委員 財務省の矢野康治事務次官が月刊誌「文藝春秋」への寄稿で与野党の政策論争を「バラマキ合戦」と指摘したことが政界で物議を醸している。衆院選をめぐる各党代表の討論会では必ず質問に採り上げられ、ムキになって批判する自民党幹部もいる。一官僚の提言にここまで反響が大きいのは、裏を返せば矢野氏の指摘があまりに図星だったということだろう。安倍・菅政権下で官界を覆っていた「物言えば唇寒し」のムードは、国家財政の財布のひもを握り「頭の堅い金庫番」と煙たがられてきた財務省でも例外ではなかった。矢野論文がその沈黙を破り、国家財政の〝座標軸〟を改めて示し、選挙戦論戦を軌道修正させたことをまずは歓迎したい。 直言に気圧された政治家たち 矢野論文の主張内容は、