OPINION 「シンプル」転じて「形式化」−禅とジョブズ、アップルの関係 / 記事一覧 (スティーブジョブス氏写真・アップル社ホームページより) アップル製品の快感はどこから? アップル経営者のスティーブ・ジョブズ氏が亡くなって、10月5日に1年が経った。冥福を祈ると同時に、私の関心のある仏教と禅から、考える視点を提供してみたい。 「シンプルだけれども複雑」。「違うものが一つにまとまる」。こうした矛盾を統合する製品設計の思想。これは製品群のコンセプトを一人で考えたとされるジョブズが東洋思想、特に日本の禅の影響を受けているためとの指摘がある。すべてが禅の影響とは思えないが、確かに親和性のある考えだ。 ジョブズは1960年代から70年代、カウンターカルチャーと呼ばれる東洋思想への関心が欧米に広がったときに禅に触れた。この考えは、物質万能とか、理性ですべてがとらえられるという近代思想へ