絶望したことがあるか、と問われて振り返ると、私はとりあえずそういう経験がなかった。紛争もクーデターもない、そこそこ安定した民主主義国家日本では、そうそう絶望するような不幸は訪れない。しかし、天災も事故も犯罪もいつこの身にふりかかるかわからないのも確かで、そういうとき、いったい自分はどのくらいの不幸や試練に耐えることができるのだろう。 ≪パルデン・ギャツォ≫ そういうことを考えてしまったのは最近、チベット問題をテーマにしたドキュメンタリー映画「雪の下の炎」を見たからだ。監督は1973年生まれの日本人女性。ニューヨーク在住で楽真琴(ささ・まこと)さんという。昨年のトライベッカ・フィルム・フェスティバルでプレミアム上映され好評を得たこの映画が4月11日から渋谷のミニシアター・アップリンク(http://www.uplink.co.jp/top.php)でも上映されることになり、東京に一時帰国して