ペンギンが激怒するのは、どんな時だろうか。巣作りに必要な小石の奪い合い、卵やヒナを狙って襲撃してくるナンキョクオオトウゾクカモメとの戦いなど、理由はさまざまだ。 頭を三角にして白目を大きくし、フリッパーと呼ばれる翼の部分を手の様に使い、たたき合う姿は、まるで殴り合う人間のよう。ひとたび、バトルが始まると、ぶつかりあう音や叫び声が、静かな極地に響きわたった。 まず驚くのは、相手を威嚇するときの格好。首を斜めにしながら近づき、にらみ合う姿は、やくざ映画のそれとイメージが完全にダブった。その後、取っ組み合いになると、簡単には収拾がつかないことが多かった。他のペンギンの巣なんておかまいなし。ヒナがいたって関係なし。縦横無尽にルッカリー(集団繁殖地)の中を追ったり追われたりしながら、そこかしこでケンカを続けていた。 当然、他のペンギンにはいい迷惑。だが、キレた奴らを説得するのは無理といった感じ