渡部昇一の『自由をいかに守るか……ハイエクを読み直す』(PHP新書)を、たまたま駅の売店で見つけたので、暇つぶしに読んでいるが、評判の割には思想的な中身が薄く、ちょっとがっかりである。たとえば、渡部昇一は、経済学者ハイエクの経済学という専門領域を超えた哲学的深さと広がりを強調して、ハイエクの『隷従への道』をマルクスの『資本論』等と並べて20世紀の名著と絶賛した上で、その根拠を、左右の「全体主義」を批判し、人間の自由を強調したところに、たとえば、20世紀の知識人を捉えたマルクス主義的な統制経済主義の呪縛から解放したところに、言い換えれば、ソ連崩壊を導いた理論的根拠を与えたのがハイエク理論であつたところに、求めているが、この分析は、ちょつと単純素朴すぎると僕は思う。渡部昇一は、『資本論』が、マルクス主義的な統制経済を主張しているかのように書いているが、ここから、渡部昇一が、マルクスの『資本論』