こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 筑紫国のとある地に、貧しい女が暮らしておりました。 海近くに住んでおりましたので、いつも浜に出ておりました。 ある日、女は二歳の子を背負いまして。 隣の女とともに磯へ出て、貝を拾っておりましたが。 途中、しばし岩の上に子を下ろし。 上の子に守りをさせておりました。 しばらくして、ふと辺りを見渡すト。 山から降りてきた猿が、浜辺で佇んでいるのが見えた。 「ごらんよ。魚を獲ろうとしているんだろうね。見に行こうか」 そう言って女ふたりが近づいていきますト。 猿は怯えながらも、どうしたことか逃げずにいる。 辛そうな顔をして、逃げるに逃げられないといった体でございます。 何をしているのだろうかト、しばし見守っておりますト。 その謎がふたりにもようやく解けました。 溝貝という貝の大物が、口を開けていたところへ。 この猿がおそらくは取って食おうとしたの
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