JINSEI STORIES 滞仏日記「やっと旅先の息子と話すことが出来た。彼が見つけた幸せとは」 Posted on 2020/07/12 辻 仁成 作家 パリ 某月某日、息子がアンナちゃんの家族と夏休みの合宿旅行に出てから一週間ほどが経った。毎日、「Ca Va?(元気?)」とメッセージを送っていたが、「oui(うん)」しか戻って来ないので、それが何日も続くものだから、さすがにこのやりとりだけじゃいかんと思って、ついに、父ちゃんは重い腰をあげ、息子に直接、電話をかけることになった。 「毎日、何してんの? どんな生活おくってるの?」 「うん、楽しいよ。大丈夫」 「あのさ、大丈夫って、もうちょっと具体的に教えてくれない? 一応、ひと様の家に息子を預けてる親の身としては心配なんだよね? 手伝いとかしてんの?」 「あ、ご飯たべたら、ぼくも食器洗ってるよ。順番で片づけないとならないんだ」 「へー、