一般に蓄熱法は大きく分けて、水や岩石、金属塊などの高比熱の材料を冷やしたり加熱して熱を蓄える顕熱蓄熱法と、物質が融けたり凍ったりする際の相変化時に発する熱を利用した潜熱蓄熱法に分けられる。後者の潜熱蓄熱材として最も身近で安価な材料として挙げられるのは氷であり、冷却材、保冷材として一般的に古くから用いられている。氷以外の蓄熱材としては、無機系の共晶塩化合物と有機系化合物がある。両者の特徴を表1及び表2に示す。筆者は有機系蓄熱材が、無機系の共晶塩化合物とは異なり、材料化合物の適当な選択により幅広い温度域にわたってきめ細かく蓄熱温度を設定できること、また多数回にわたる融解と凝固の繰り返しに対しても極めて安定であることに注目した。有機系蓄熱材はそのままでは実用範囲が限定されることから、このものをマイクロカプセルに内包させた蓄熱材マイクロカプセル(以下、HSカプセルと称する)の、開発研究を行ってきた