わたしの大学時代の先輩が、あるとき外資系の会社に転職しようと思い立った。米国の技術系ソリューション・ベンダーで、世界的に急成長中の企業だ。大学の恩師に相談に行ってその話をしたら、かえってきたのは思いもよらぬ言葉だった。「外資系に行くなら、技術でなく営業をやれ。」恩師は言葉を継いで、次のような意味のことを語った。 技術力が売り物の会社であればあるほど、技術開発の中心部分は目の届く米国内で、米国人によって行う。日本で技術屋がやらされるのは保守サポートのつまらぬ仕事で、そんなことをいくらやっても上には行けぬ。もし外資系の会社で上に行きたいのなら、セールスをやるべきだ。販売の仕事だけは、各国の現地でやるしかないからだ。仕事を一杯とって、十分な売上と利益を上げられれば、本国からも重視されるようになるだろう。 この先輩は悩んだ後に、恩師の言う道を選んだ。営業部門に入って、やがて華々しい成果を上げるよう