車を細い路地に入れる機転が功を奏した。 当時、町立山田南小2年の長男(8)と近所の同級生の2人を後部座席に乗せていた。自宅に戻る途中、高さ数メートルの堤防を津波が越えてくるのを見た小野さんは、車を細い路地にバックで入れて停車。車は数秒でエレベーターのように2階の高さまで浮き上がり、津波がひくと、そのままの姿勢で「着地」した。車が転覆するのを壁が防いでくれた。目の前の道路では、波を受けた車が転がるように押し流されていくのが見えて怖かったという。 後部座席の窓を割って子ども2人と車を脱出すると、近くにいた男性らの助けで高台に逃げた。3人ともけがはしていなかった。 小野さんは「あきらめかけた時、子どもが明るく『助かろうね』と声をかけてくれた。子どものおかげで希望を持てた」と話した。