東京のド真ん中、渋谷区初台にひっそりたたずむ『フヅクエ』は、心静かに読書の時間に没頭できる幸せな場所。どうして、これほどまでに居心地がいいのか。店主・阿久津隆さんに尋ねた。 意識的につくられる、静けさとゆるやかな時間。 客ひとりにおける平均滞在時間は2時間30分。カフェでもない、喫茶店でもない、バーでもない「本の読める店」という位置づけの『フヅクエ』では、店を始めた2014年から、店主である阿久津隆さんがひとりひとりの客のイン・アウトの時間をデータとして記録してきた。その結果が2時間30分。もちろん、それ以上の時間でも、それに満たない時間でも、気兼ねすることなく過ごしてかまわない。 とはいえ『フヅクエ』にいると、自分の滞在時間が短いのか長いのかわからなくなる。普段の生活から切り離されて時間と空間が存在しているかのようで、まるで繭の中にいるように守られている感じがする。『フヅクエ』では、こう