東大在学中から政治家を志していた元総務相の鳩山邦夫は、田中角栄の秘書を2年間務めた経験を持つ。 昭和46年夏、鳩山は田中の門を叩(たた)いた。7年超の長期政権だった佐藤栄作の後継レースの渦中であり、田中は自身も後継候補の一人であるにもかかわらず、まだ大学生だった鳩山の相手を2時間もしてくれた。 「どなたかの秘書になりたいんです」 鳩山が希望を告げると、こんな答えが返ってきた。 「ペーペーの議員の秘書をやるな。つまらんことを覚えるし政権中枢の話は聞けない。私設秘書でいいから首相の秘書をやれ。わしが請け負う。佐藤さんがもう1回やるなら佐藤さん。福田赳夫君がなったら福田事務所に入れてやる」 その上で田中は、少し声を落としてこう続けた。 「わしがなれば、もちろん引き受けてやる」 田中としては政界の名門、鳩山家の御曹司を囲い込む打算もあったかもしれない。ともあれ鳩山は田中に魅入られ、翌47年、約束通