2011年06月09日22:32 カテゴリ本 南方熊楠 3・11後にイナゴのように湧いてきたにわかエコロジストには、南方熊楠を読むことをおすすめしたい。彼は「エコロジー」という言葉を日本に初めて導入し、その本質を誰よりも深く理解していた人である。彼は自然の複雑性を近代科学の単純性に還元することを拒み、博物学の世界にこだわった。本書は彼についての解説書で、学問的なオリジナリティはないが、読みやすくおもしろい。 南方は旧制中学時代に大蔵経や四書五経をすべて暗記し、19カ国語をあやつった天才で、ロンドンに留学して大学のポストを提供されたが、帰国して和歌山県の実家に閉じこもって一生を過ごした。その土蔵を撮影したことがあるが、漢文から博物学に至る膨大な蔵書にびっしりと書き込みがあった(BSで3時間番組を2本つくった)。 彼が一生を賭けたのは、粘菌の研究だった。これは当時はまともな学問研究の対象とはみ