オレンジが好き。チョコレートも大好き。 だとすればその二つが合わさったオランジェットが嫌いなはずがない。けれど、この大人のお菓子を最初から好んで食べていたわけではなかった。 子どもの頃はむしろ、オレンジの部分の苦みや口に残る繊維が苦手で、チョコレートの部分だけこそげ落とすようにして食べたこともある。 どうして大人たちはあんなにも美味しそうに食べるんだろうと不思議でしかたなかった。 好きになった理由はただ一つ。美しかったからだ。 美味しさも分からないうちから、スイーツショップに行けば必ず親にオランジェットをねだる子どもだった。 その先が透けて見えるような果肉の部分は光を反射してキラキラと光り、ライトにかざせば肌に柔らかいオレンジ色の影を落とす。まるでステンドグラスみたい。 艶やかな砂糖漬けとその半分にかけられたチョコレートのマットな質感とのコントラストがたまらなくおしゃれでうっとりしてしまう