いま、台湾でフリージャズの新しい動向が盛り上がりを見せている。恥ずかしながら、今回このインタビューを実施するまで、わたしはそのことを捉え損ねていた。もちろん、これまでもノイズや実験音楽、サウンドアートなどに関しては、台湾に独自のシーンがあることを認識していた。フリージャズを演奏するミュージシャンが何人か存在することも把握していた。だがジャズのシーンとなると、いわゆるスタンダードで保守的なものしかないと思い込んでいた。 しかしこれは大きな勘違いだった。台湾には約100年前の日本統治時代まで遡ることのできる独自のジャズの歴史があり、21世紀に入ってからは台湾ならではの要素を取り入れた実にユニークなアルバムも多数リリースされてきている。そして2010年代以降、ノイズのシーンとも交差しながら、台湾のジャズの歴史は新たな段階に入っていたのだ。そうした台湾フリージャズの立役者の一人が、サックス奏者・謝