(前項より続く) 『Self and Others』では、写真を媒介とする関係は対面する自己と他者に限定され、最後の写真のアブソープションの舞台はアメリカの基地であった。このアブソープションをテーマとしつつ、舞台を日本の「見慣れた街」に設定し、写真を媒介とする関係を、基本的に対面しない関係=ストリートスナップへと拡張する — これが1981年、私家版で出版された『見慣れた街の中で』の枠組みである。 さて、前々回、70年代を分水嶺として、リアル=シュールリアルな「あるがまま」を落としどころとする写真論に支えられたモダニズム写真が退潮していく中で、あるがままリアルな世界を、空虚として留保する「最後のモダニスト」タイプの写真家たちに言及した。彼らは、意味や価値の真空、純粋な写真的空虚を実現するために、モダニズムの二元論の両極を同時に遂行する「プラスマイナスゼロ」の方法論を採り、例えば90年代にフ