桜井好朗(さくらいよしろう)著「吉野の霧 太平記」吉川弘文館刊を読み終えた。 よく知られているように、「太平記」は鎌倉時代の終焉から室町時代の始まりに至る日本列島全体を巻き込んだ動乱の時代、いわゆる南北朝時代を扱った古典である。 この本は中世史の専門家である著者が、40巻に及ぶ太平記を若者向けに24のエピソードとして現代語抄訳したもので、元々1978年に刊行されたものを歴史専門出版社の「読みなおす日本史シリーズ」のひとつとして復刻されたものである。 表題に使われている「吉野の霧」は、動乱の主役のひとり南朝の後醍醐天皇が吉野で亡くなられるエピソードの章題にも使われており、本の「はじめに」を読むと、著者はこの霧を人間世界の見通しのきかない状況、動乱が始まる前の混沌とした状況に見立てている。 私の子供の頃、「太平記」は色々なエピソードが児童書に使われていて、小学校下校時に図書館に寄り読み耽った想