この度は殿がかように愚かしき言論をはじめてしまい、家臣一同お詫びの 言葉もござりませぬ。 殿は先の戦での大敗以来すっかりお心を病んでしまい、昼は村娘をかどわかし、 夜ごと酒を召しては家臣に斬りかかる毎日でござる。 奥方様は病で倒れ、折からの飢饉で民は飢え苦しみ、近隣諸国の大名はこれ幸いと ばかりにわが国との国境を侵し始めている次第にござりまする。 家臣の中にも殿に翻意をいだく者が多く、このままではお家存亡の一大事に なりかねませぬ。 しかし、ご安心下され。間もなく殿には出勤していただく手はずにござる。 殿が職安に向かう途中に手練れの者をひそませ、殿の履歴書を頂戴する算段が 整っておりまする。 その後は殿の甥にあたられる茂名の上(もなのかみ)様を 殿として影武者として面接に送り、我ら家臣一同忠勤を尽くし合格させる心づもりでござる。 皆様方には迷惑をおかけして、まことに申し訳ござりませぬが、今