われわれがスイスをイメージするもののひとつに「永世中立」がある。スイスでは、このことが一層明確に現れており、「スイスを象徴するもの」を問うたクレディ・スイス社の調査(2015年)によれば、2位の「安全保障・平和」(19%)を大きく引き離し、実に32%ものスイス人が「中立」と答えているのである。 ところが、スイスの象徴にもなっている永世中立とは、そもそもどのようなものなのかを問われたとき、われわれがそれに適切に答えるのは至難なことである。 そこで、本稿では、永世中立とはどのようなものなのか、永世中立国はどのようにしてその地位を保持しているのか、といったことを永世中立国として200年以上の歴史を有するスイスを中心に、スイスの平和外交の意義にも触れながら、明らかにしようと思う。 永世中立とは、端的にいえば、戦争に巻き込まれないための、主として小国によって採用される安全保障制度であり、将来の戦争に