「死者」を思う季節 日本人は夏になると、「死者」について思わざるをえなくなる。なぜならそれは、「お盆」と「終戦」というレベルが異なる二つの“行事”が真夏に行われるからだ。しかし、現在の私たちは、異常気象による灼熱の下で、十分に死者に思いを巡らせることができているだろうか。 古来日本では、仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)から派生した祖霊供養である「お盆」が、新暦の7月に、あるいは旧暦に8月に行われてきた。いまでは「盆踊り」も本来は、死者の霊を慰めるため、共同体ごとに行われるものだった。 家々では、迎え火を焚いて先祖の魂を迎え、送り火とともに祖霊を送る。また麻幹(おがら)にキュウリやナスビを刺した「精霊馬(しょうりょうま)」が、お盆にあの世とこの世を行き来する祖霊の乗り物として供えられた。 現在公開中の映画『天気の子』にも、迎え火と精霊馬が印象的に映し出される。『天気の子』は間違いなく、夏のお盆を