出版大手アシェットとオンライン小売りの巨人アマゾンの争いに、ドナ・タートやスティーブン・キング、マルコム・グラッドウェルといった有名作家の一群が割って入る動きに出た*1。 音楽業界に詳しい人にはおなじみの戦術だ。かの業界では、音楽出版社の利害は音楽家の利害と一致するという理屈を著名な音楽家たちに吹き込んでいるのだ。この理屈は、実態とはかなり異なる。 音楽業界と印刷メディア業界はともに、デジタル化によって根本的に変わった産業の一角に名を連ねる。アマゾンはこの変化をペーパーバックの登場になぞらえるが、それはかなりの過小評価であり、むしろ印刷技術の発明になぞらえるべきだろう。デジタル化によって、書籍販売に参入する際の障壁とコストはほとんど消えてしまったからだ。 どんな産業においても、事業をすでに確立した企業は、既存のビジネスモデルに内在する既得権益のせいで根本的な変化への対応が鈍る。 音楽出版社