「障害」の概念とその表記の仕方 この問題について検討する前に、そもそも障害や疾患とは何をさすのかについて少し論じよう。最近ではわが国では少なくとも精神科領域では「精神疾患」の代わりに「精神障害」の表現が用いられるようになって久しいが、それは欧米の診断基準である DSM や ICD が標準的に用いている “disorder”(通常は「 障害」と訳される)という呼び方に対応して用いられているという事情考えられる。しかし「精神障害 」の「害」の字は明らかにマイナスイメージが付きまとうということから、最近では代わりに「障碍」ないしは「障がい」という表記をすることが多くなってきた。(ただし「碍」という文字の語源を調べると、これにも同様にマイナスな意味が含まれるようであり、果たして「障碍」への置き換えには意味があるのかという疑問も生じる。) そして最近はこの disorder がさらに「症」と訳される