読み物シリーズ シリーズ ヨモヤモバナシ 家船と小型漁船の便所 △講話者 松田 旭正 * コーディネーター 地田 修一(日本下水文化研究会会員) 1.家船(えふね)とは 家船は日本の海上漂泊漁民の総称である。その成立ちはいまだに明確にされていない。 家船集落地は長崎県の西彼杵(そのき)郡一帯と瀬戸内海に広く分布していた。瀬戸内海では広島県豊田郡一帯,尾道市吉和,忠海町などを根拠地として,瀬戸内海各地や,遠くは壱岐,五島までも進出していた。今では瀬戸内海漁業の衰退とともにしだいに数が減って形が変わってきた。 水上居民の船といえば,中国の「蛋民」(たんみん)がもっとも有名である。香港の摩天楼を背景に大小さまざまな型の船が浮かぶ風景は香港ならではである。 蛋民といわれる水上生活者は,香港以外に広東省の珠江流域,福建省のびん江流域に多く住んでいた。 日本では昭和半ば頃までは瀬戸内海でも古い漂泊漁業