はじめに 筆者は昨年の『季刊労働法』194号に「EU社会政策思想の転換」と題して1990年代に構築されてきたEU労働社会政策の新たな方向性を紹介した。 1990年代は日本の労働社会政策にとっても大きな変化の時代であったが、それは残念ながら主体的に未来を切り開くというより、ネオ・リベラリズムの色濃いアングロサクソンモデルの奔流に押し流され、日本モデルの良いところさえ見失いかねない混乱の10年であったように思われる。 前稿は、そういう中にあってEUの新たな労働社会政策が、今までの硬直性に対する批判を率直に受け止めて柔軟性を追求する方向に向かっていること、しかしながらそれはアングロサクソン流の労働市場の柔軟化だけでなく、労働組織の柔軟化というある意味では日本モデルへの接近ともいうべき方向性をとっていることを明らかにし、この柔軟性の源泉として改めて労働者参加を位置づけようとしていることを紹介した。