巨大企業の暗部を描き続けた作家、清水一行に『秘密な事情』(集英社文庫)という問題作があった。国内最大手の電気機器メーカーの広報マンが、自社のブランドイメージを堅持するために日々奔走する姿が、実話に基づいたエピソードを交えて生々しく綴られている。 小説の中で広報マンが特に対応に苦労をするのは、同族企業の枷である。カリスマでなければならない創業者や一族の醜聞や不祥事を隠蔽するために、主人公はありとあらゆる工作を尽くす。しかし、労苦は報われずに左遷され、消耗、疲弊していく。作品が発表されてから20余年が過ぎたものの、組織への殉死に等しい過労死や、相変わらずのブラック企業の跳梁を見る限り、勤労者を取り巻く環境にあまり変化はないのかもしれない。 食品業界のガリバー企業のひとつ、山崎製パンは好感度、ブランド力の高い企業として、広く知られている。おそらく同社の製品を口にしたことがない人は、稀であろう。ス