突然襲った激震に人々が逃げまどい、もうもうと火炎が立ち上る中、残虐な行為を繰り広げている――。関東大震災の朝鮮人虐殺の様子が描かれたと思われる希少な絵巻物が、発生から100年の節目に東京都新宿区の高麗博物館で公開されている。生々しい絵が、私たちに問いかけるものは何だろう。 絵巻物を見つけたのは専修大元教授で、高麗博物館前館長の新井勝紘さん。日本近代史・自由民権運動を専門としている。国立歴史民俗博物館に助教授として勤めていた当時、関東大震災の展示に関わって以来、朝鮮人虐殺を描いた絵画の収集・研究を続けている。「今になってまさか、こんな資料が見つかるとは」と驚きを語る。 大学を退職後も、ネットオークションで古い資料を探すのが日課だった。一昨年2月、いつものようにパソコンを開くと、「関東大震災絵巻1・2 大正15年 肉筆 淇谷(きこく)」という作品が出品されているのを見つけた。すぐさま参加し、9