文/矢島裕紀彦 今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。 【今日のことば】 「奉仕を続けていれば天は何かを与えてくれる」 --藤村治太郎 藤村治太郎は明治11年(1878)、岩手・盛岡の生まれ。家は造園業を生業としていて、治太郎も植木職人となり、やがて2代目として跡を継いだ。掲出のことばは、藤村治太郎が新渡戸稲造からいわれたことばで、家訓として後世に引き継いだものという。 この藤村治太郎が地元新聞に3段抜きの大見出しで紹介されたのは、昭和7年(1932)9月6日、数え55歳の折だった。見出しは「物云はぬ石割桜を火焔から救つた人」。一体、何かあったのか。 記事が掲載される4日前、9月2日の夜、盛岡の中心部にある盛岡裁判所が火事となった。治太郎の息子で植木職の益治郎は、地元