次回作の取材のため、一ヶ月余り全国をまわっていた。 福島原発事故から4年目を迎えて、 被災者がいまどういう思いでどんな生活を送っているのか、 あらためて知りたいと考えたのである。 双葉町の自宅に半永久的に戻れなくなった人から 被ばくを避けようとして沖縄に避難した人まで、 生活も放射線に対する不安も様々に違う人たちと会った。 最も心を動かされたのは、 現状の放射線をそれほど危険視していない人も含めて、 全員が原発事故によって それまでの人生を大きく捩じ曲げられていたことである。 原発事故の被害は「人の数だけある」と痛感した。 健康不安や財物の損傷だけが原発事故の問題ではない。 例え現在の放射線量では健康被害の怖れは小さいとしても、 それは「被害がなかった」ことを意味しないのである。 原発を推進してきた国や東電を免責するものでもない。 低線量被ばくの危険性をめぐる論議は とかく「神学論争」(水