元 在インド日本国大使館 医務官 (現 東大宮病院 内科医師) 小田 秀治 はじめに インドは感染症の宝庫です。この亜大陸にはこの世に存在する感染症のほとんど全てが存在すると言っても過言ではありません。しかしながらインドに住む邦人がこれらの様々な感染症の危険に日々晒されているという状況ではありません。大部分の邦人は現地の人々の平均的な水準に比べ、遥かに優れた生活水準で暮らしており、この高い生活水準が結果的に多くの感染症の予防に寄与することになるからです。 注意すべき感染症 邦人がインドで生活する上で、特に注意を要する感染症について述べさせていただきます。 1.A型肝炎(Hepatitis A) 社会的犠牲の大きい疾患として発展途上国に住む邦人にとって問題となってきた感染症です。社会的犠牲とは即ち、この疾患に罹った場合には、療養のために、仕事を含め従来の生活への復帰までに長期間を要するため、