現代日本における「批評」の源流の多くは、小林秀雄の仕事の中に見出すことができる。それは小林が「日本の近代文芸批評の確立者」として名高いことからも推測することができるだろう。だが、その思想は多くの批判をも浴びているのも確かだ。その批判の中で特に重要な批判だと思われるのは、彼の「批評」のスタイルに対してのものである。それは対象を「直観」で捉えることを重視しすぎているという批判である。そのため、論理展開が飛躍したり、分析とはかけ離れた「批評」が生まれる。つまり、小林の「批評」は「非論理」的であるという批判だ。 もちろん、この批判には一理あるだろう。なぜなら、その「批評」のスタイルは人類の歴史を進歩させると思われていた科学的態度からほど遠いようにも見えるからだ。しかし、そこには徹底して実践的な「論理」が存在している。広く人々の心を動かすことによって、科学思想によって零れ落ちていく人格の尊厳を掬い上
![「日本における批評の原点にあるもの」、『小林秀雄の哲学』(高橋昌一郎 著) | Mirai-Kairo.com](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/02b12834b1c741408ad89d6e95dc078a781857fe/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fmiraikairo.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F41kI0dz8TUL.jpg)