研究ノート:ジャン・ジャック・ルソー『エミール』を読む 「捨てる」と「拾う」との共時的社会の中のルソーの「子捨て」と『エミール』 はじめに J.J.ルソー『エミール』は教育界で必読書とされている。同書によって拓かれた教育事実がおびただしいものであることからも、そして教育を考えるものならばその開拓事実をさらに継承発展させていく義務を負うことからも、必読書である地位は揺るぎないものである。ただ、そうした開拓・継承・発展過程を持ちつつ、その一方で『エミール』にルソー自身がかなりの「制約」(舞台設定)を与えていることも事実であり、その事実を看過することができない立場からすると批判的にならざるを得ないわけである。私は『エミール』をあげつらって批判する立場ではないことを前置きしておき、とりあえず「制約」の問題について箇条書き的に整理してみたい。 制約の中の『エミール』 (1)男子教育と女子教育とを歴然