この人にとって、政治とは結局、権力闘争以外の何ものでもなく、人々のいのちや暮らしには何の関心も持っていなかったのではないだろうか。 9月3日、菅義偉首相の退陣表明をテレビで見ながら、私はそんな印象を拭うことができなかった。 菅首相が自民党総裁選への不出馬に追い込まれた直接的な要因は、党内での求心力を失ったことにあるが、その背景には今夏、デルタ株の感染が爆発的に広がり、政府の感染対策への批判から支持率が急落したことがあるのは間違いない。 そんな菅首相を擁護しようとして、麻生太郎財務相は7日、「(感染は)まがりなりに収束して国際社会の中での評価は極めて高いと思う」と、耳を疑うような発言をおこなった。 事実ではない虚偽の情報を事実であるかのように強弁する麻生氏の言動は、米国のトランプ前大統領が多用した「オルタナティブ・ファクト」という手法を思い起こさせるものだった。 今から1年前に首相に就任した
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