「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる漫画家の故・水木しげるさんは、太平洋戦争で左腕を失い、その体験を多くの作品に残した。長女で「水木プロダクション」代表の原口尚子(なおこ)さん(56)=東京都調布市=は今夏、戦争を巡る父の体験談やエピソードを初めて本格的に人前で語った。戦争体験者が少なくなる中「戦争に向かうハードルが低くなっている気がする」という危機感が背中を押した。 (松野穂波) 名古屋市名東区にある戦争と平和の資料館「ピースあいち」で七月二十日、七十人余の聴衆を前に、原口さんはマイクを握った。水木さんが漫画の下書きに「生きようという気持ちがないと神様も助力してくれない」と書き残していたことや、二〇〇三年に叙勲を受けた際に「勲章は戦争で死んだ者にやるべきです」と言った逸話を紹介。「水木は亡くなる間際まで、戦友のことを心に留めていた。漫画家だった六十年間を凌駕(りょうが)するほど、三年間の戦争の記