この本は1995年にアメリカで出版されて、ジャマイカのみならずアメリカ・イギリスでも大変話題になった「Born Fi' Dead」の日本版である。 政治家とギャングの癒着関係、警察の不正。そして否応なしに巻き込まれるゲットーの人たち。なぜ彼らは状況の被害者であり続けなければならないのか。ジュニア・ゴングの「ジャムロック」やベイビー・シャムの「ゲットー・ストーリー」で歌われている現実(リアリティ)とはどんなものなのか。最近「近代化」の美麗字句に厳しい現実がかき消されていることの多い中、その背景にはぜひ注意を向ける必要がある。 「ボーン・フィ・デッド」が出版されて10年以上経ち、ジャマイカの現実は微妙に変化した。世界的に麻薬ビジネスが大きくなり、貧しい生まれの者でも多少のリスクを負えば簡単に大金を手に入れられるようになった。国外のジャマイカ人コミュニティーが拡大したことによって、海外とジャマイ