万物を説明する究極理論の有力候補,「超弦理論」によれば,重力を伝える重力子をも含む全素粒子は極微の弦であり,弦の振動パターンの違いが素粒子の種類に対応する。そしてこの宇宙は9次元空間とフェルミオン次元と呼ばれる奇妙な次元からなる「超空間」であると説く。この超空間における弦の振る舞いを数値シミュレーションで厳密に再現したところ,最初,弦が存在する9次元空間は極小サイズに縮まっていたが,ある時を境に,9次元のうちの3次元だけが急速に広がり始めた。これは私たちが認識する3次元宇宙の誕生を示唆する。 再録:別冊日経サイエンス203「ヒッグスを超えて ポスト標準理論の素粒子物理学」 著者中島林彦 / 協力:西村 淳 中島は日経サイエンス編集長。西村は高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所理論センター准教授。専門は素粒子理論。超弦理論の数値シミュレーションを用いて宇宙創成やブラックホールの内部構