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ブックマーク / www.nikkei-science.com (8)

  • 超弦理論が明かす宇宙の起源

    万物を説明する究極理論の有力候補,「超弦理論」によれば,重力を伝える重力子をも含む全素粒子は極微の弦であり,弦の振動パターンの違いが素粒子の種類に対応する。そしてこの宇宙は9次元空間とフェルミオン次元と呼ばれる奇妙な次元からなる「超空間」であると説く。この超空間における弦の振る舞いを数値シミュレーションで厳密に再現したところ,最初,弦が存在する9次元空間は極小サイズに縮まっていたが,ある時を境に,9次元のうちの3次元だけが急速に広がり始めた。これは私たちが認識する3次元宇宙の誕生を示唆する。 再録:別冊日経サイエンス203「ヒッグスを超えて ポスト標準理論の素粒子物理学」 著者中島林彦 / 協力:西村 淳 中島は日経サイエンス編集長。西村は高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所理論センター准教授。専門は素粒子理論。超弦理論の数値シミュレーションを用いて宇宙創成やブラックホールの内部構

    超弦理論が明かす宇宙の起源
  • 2021年ノーベル生理学・医学賞:温度受容体と触覚受容体の発見で米の2氏に

    2021年のノーベル生理学・医学賞は,温度受容体および触覚受容体を発見した功績で,米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のジュリアス(David Julius)教授,米スクリプス研究所のパタプティアン(Ardem Patapoutian)教授の2氏に授与される。 温度受容体の発見 人間は,自分の周囲にある環境をさまざまな感覚を通じて把握している。たとえば視覚や聴覚,嗅覚の情報は,それぞれ目や耳,鼻の細胞にあるタンパク質のセンサーによって受容され,電気信号に変換されて脳へ伝わる。触覚や温度,痛みといった感覚も同様だが,センサーとなるタンパク質の正体は長らく不明だった。 ジュリアス氏らが痛みの感覚を発生させる受容体を突き止めたのは1997年だった。研究で着目したのはトウガラシの辛み成分であるカプサイシンだ。トウガラシのたくさん入った料理べると,口の中がヒリヒリと熱くなって痛みを生じる。カプ

    2021年ノーベル生理学・医学賞:温度受容体と触覚受容体の発見で米の2氏に
  • 優しくなければ生き残れない 進化史に見るホモ・サピエンス成功のカギ

    私たちホモ・サピエンスはどのようにして現在に至る最後の人類となったのだろうか? 10万年前にはネアンデルタール人のほうが有力だったかもしれない。ホモ・サピエンスは友好的な形質が自然選択される過程を経験した結果,集団で高度な協力ができるようになったと考えられる。この精緻な社会性から文化技術が生まれ,生き残りに寄与した。 再録:別冊日経サイエンス242「人間らしさの起源 社会性,知性,技術の進化」 著者Brian Hare / Vanessa Woods ヘアはデューク大学の教授(進化人類学,心理学,神経科学)。ウッズは同大学イヌ科動物認知センターの研究者でデューク子犬幼稚園の所長。2人の近著「Survival of the Friendliest」は7月にランダムハウスから出版された。 関連記事 「生まれながらの協力上手」,G. スティックス,日経サイエンス2014年12月号 原題名Sur

    優しくなければ生き残れない 進化史に見るホモ・サピエンス成功のカギ
  • ホログラフィック宇宙

    「ホログラフィック原理」と呼ぶ理論によると,宇宙は1枚のホログラムに似ている。ホログラムが光のトリックを使って3次元像を薄っぺらなフィルムに記録しているように,3次元に見える私たちの宇宙はある面の上に“描かれた”ものだ。はるか遠くの巨大な面に記録された量子場や物理法則と,私たちの宇宙とは完全に等価だ。 ブラックホールの研究を通じて,ホログラフィック原理の正しさを示す手がかりが得られた。常識に反して,ある空間領域のエントロピー(情報量)は,領域の体積ではなく表面積によって決まることがわかった。この驚くべき発見は「究極理論」を目指す研究のカギになるだろう。 物質がブラックホールに落ち込んで消え去るとエントロピーも永久に失われ,熱力学の第2法則が破れてしまうように見える。私(ベッケンスタイン)は英ケンブリッジ大学のホーキング(StephenW. Hawking)らの研究成果にヒントを得て,「ブラ

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  • だれからも文句のでない投票方式

    候補者から1人だけを選んで投票する方式では,多数派の意思が正しく反映されるとは限らない。しかし,ちょっとした工夫を加えれば,この問題を解決できる。 完全な投票方式は存在しない。どんな方式にも何らかの欠陥がある。近年,フランスと米国で実施された大統領選挙ではいくつかの問題が生じた。2002年のフランス大統領選挙では,予想に反して,極右政党のルペンが上位2人の候補者で競う決選投票に進んでフランス国民を愕然とさせた。2000年の米国大統領選挙では,最も人気のあったアル・ゴアがジョージ・W・ブッシュに破れ,多くの米国民を驚かせた。 これに対し,いわゆる「真の多数決方式」を採用すれば問題点を解決できる。この方式では,投票者はすべての候補者について選好順序を示す。これに基づいて候補者どうしを1対1で比較したとき,他の候補者をすべて打ち負かした者が当選者となる。また,他の候補者をすべて打ち負かすほどの多

    だれからも文句のでない投票方式
  • プールでおしっこするな!〜日経サイエンス2014年10月号より

    危険です,マジに この夏,私たちの5人に1人は常識はずれのことをするだろう。プールのなかでおしっこすることだ。 だが,このだらしない行為は汚いだけではすまされない。ごく少量ではあるが,有毒な化学物質を生み出すのだ。「プールの水は塩素を含んでいるからおしっこしても大丈夫と思っている人がいるが,まったくの大間違い」とパデュー大学の化学工学者ブラッチリー(Ernest Blatchley)はいう。プールにおける塩素の仕事は殺菌であって,身体機能を引き受けることではない。 塩素が尿酸と反応して… 実際,塩素は尿酸と容易に反応する(尿酸は窒素を含む化学物質で,名前の通り尿に含まれる)。この結果,塩化シアン(CNCl)と三塩化窒素(NCl3,トリクロロアミン)ができる。これらは潜在的に有害で,ブラッチリーが過去10年間に調べたプールすべてに存在していた。Environmental Science &

    プールでおしっこするな!〜日経サイエンス2014年10月号より
  • ヴォイニッチ手稿の謎

    中世に書かれ,「世界で最も不可解な書物」と呼ばれてきた謎の手稿がある。奇妙な文字でつづられており,解読の試みはことごとく失敗した。しかし最近の研究によって,巧妙な“でっち上げ”の線が強まった。 この文書は1912年,稀こうを扱う米国の古書商ヴォイニッチ(Wilfrid Voynich)がローマ近郊にあるイエズス会系大学の図書館で再発見したもので,「ヴォイニッチ手稿」と呼ばれる。暗号で書かれていると考えられてきたが,解読の試みがことごとく失敗したため,そもそも暗号文ではなく,意味のあるメッセージは含まれていないのではないかという疑いが浮上した。 著者による最近の研究によって,16世紀に存在した簡単な道具を使うとヴォイニッチ手稿と似た文書を作り出せることがわかった。「カルダーノ・グリル」と呼ぶ一種の暗号作成器で,1枚のカードにいくつかの穴が開いている。桝目の中に文字や音節を書き込んだ表を作り

    ヴォイニッチ手稿の謎
  • 脳にチップを初めて埋めた男 ホセ・デルガードの早すぎた挑戦

    1970年代初め,エール大学の生理学教室の教授,デルガード(Jose Manuel Rodriguez Delgado)は世界で最も話題となり,かつ論争を巻き起こす神経科学者の1人だった。1970年,New York Times Magazine誌は,巻頭特集で「自分自身の精神を操作する“精神市民社会”の先駆者」としてデルガードを称賛した。しかしその記事は,エール大学の同僚が彼の研究に「恐るべき可能性」を感じているとも付け加えていた。 デルガードは脳に埋め込むチップを開発した。信号を受信し,ニューロンへ伝達することで精神を操作する電子装置だ。『電子頭脳人間』から『マトリックス』に至るSF映画の中では小道具にすぎなかった脳チップは,今やてんかん,パーキンソン病,麻痺,失明といった病気の治療に試されている。しかしデルガードは数十年も前に,いくつかの点ではるかに画期的な実験を行っていた。「スティ

    脳にチップを初めて埋めた男 ホセ・デルガードの早すぎた挑戦
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