事件は3月26日の昼過ぎだったようだ。東京都杉並区下井草三のアパート二階の部屋で32歳の保育士が殺害された。犯人はベランダ窓ガラスのロック部分だけ操作できるよう巧妙に穴を開け、ロックを外し侵入した。専用の道具を使ったと考えられる。侵入経路は屋根からであった。と、こうした状況を当初ニュースで聞いたとき、私はその侵入手口の巧妙さからプロ犯罪だろうとまず思った。 が、すぐにそんなはずもないと思い直した。プロなら仕事でやっている。相応の金銭の獲得が予想されないといけないし、殺人は割に合わない。とすれば、痴情による犯罪であり、被害者と面識あるものかもしれないとも連想した。 犯行の様子だけを追うと金銭が狙われたふうはない。被害者はコートを着たまま倒れていて、背中の左側に柄が取れた刃物が刺っていたという。首には圧迫痕があり、激しく抵抗した痕跡もあったという。こうした知識は当時のニュースを振り返って書いて