スエーデンの知人宅に泊めていただいたことがあります。居間のあちこちに色とりどりのロウソクが所狭しと置かれてありました。「節電のためですか?」と尋ねると、 「夜になると、子供たちは地下室に移動して夫婦だけになるから、電灯をロウソクに切り替えて語り合うのさ」という返事でした。この返答には面くらいました。30年近く前の話ですが、その知人は45歳くらいのご夫婦だったので、子供がいる45歳の夫婦はそんなにロマンチックではないはずと思い込んでいたのです。いま思えば水力発電の条件に恵まれているスエーデンでは電気代はほとんどタダなのに、お金をかけてでもロウソクに切り替えることで、夫婦の心豊かな関係を保とうという工夫だったのでしょう。 モーターを発明したことで有名な天才科学者マイケル・ファラデーの『ロウソクの科学』(三石厳訳、角川文庫)は、少年少女を愛する彼が、慈父の愛をもって語った1860年の講演記録です