僕は還暦を迎えたパーティの席で、「これからは文学原論を究めるために作家に専念する」とあいさつしました。それまで引き受けていた博覧会のプロデューサーや諸々の委員、社長業などからすべて自由になると決めたのです。 実はその40年前、プロの作家としてデビューする前の同人誌で、「文学の科学を確立しなければならない」と宣言していました。小説家の高橋和巳らと一緒に作った同人誌です。当時から文学の本質を定義づける必要があると思っていたのです。 しかし40年間作家をやってきても「文学とは何か」を定義づけるまでに至っていませんでした。 先日のバンクーバー五輪のフィギュアスケートでは、浅田真央さんがキム・ヨナさんに負けました。僕にはその理由がよくわからなかった。真央さんのほうが人間として華があると感じた。「華」というあいまいなものに対してフィギュアスケートはきちんと評価する基準を持っているものと思っていま