その瞬間、ベンチからはもちろん、ベンチの裏で見守っていたスーツ姿の選手たちも一斉にフィールドに飛び出した。 名古屋グランパス、18年目の戴冠。ピッチにできたひときわ大きな輪の中央で、ドラガン・ストイコビッチ監督が数度宙を舞う。長年グランパスの顔であり続けた「ミスター」は両手で顔を覆い、泪(なみだ)をぬぐった。 1993年のJリーグ創設時から所属する“オリジナル10”。元イングランド代表FWガリー・リネカーの獲得に象徴されるように、名古屋は世界企業をバックに豊富な資金力を誇った。 しかし万年中位。優勝候補に挙げられることはあっても、リーグを勝ち切るだけの強さを備えることはできなかった。 頂点への道程が見え始めたのは2008年から。名古屋の元選手として選手、サポーターにカリスマ的な存在感を放つストイコビッチが監督に就任。同時に、久米一正GM(ゼネラル・マネジャー)も着任し、チーム編成に