東京電力福島第一原発で発生した汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)が三月、原子力規制委員会の検査に合格した。二〇一三(平成二十五)年に供用を始めたものの、トラブルが相次ぎ、丸九年かかった。燃料の冷却や原子炉建屋への地下水流入などで生じた汚染水から放射性物質を取り除く要の設備だ。不具合は許されず、さらなる管理体制の強化と処理能力の向上を求めたい。 原発構内には今回合格した「既設ALPS」に加え、二〇一四年に稼働した改良版の「増設ALPS」と「高性能ALPS」の計三基がある。増設は二〇一七年に合格済みだが、既設と高性能は検査を受けながら試験運転として処理作業を続けてきた。 原子力規制庁によると、設備の材料、構造、性能を確認するための検査は本来、運転開始前に受けなくてはならない。ALPSは原発事故で増え続ける高濃度汚染水を減らす目的で緊急に造られたため、検査よりも稼働を優先し、試験運転とし