部屋に積まれたカップラーメン、トイレットペーパーの山。気がつくと、手元には5千円しか残らなかった。東日本大震災の義援金名目で現金を詐取しようとしたとして、詐欺未遂罪に問われた男性被告(53)が犯行に走った理由は、「買い占めによる金欠」。6月29日に東京地裁で開かれた判決公判では「自分さえよければいい」という独善的な人間性とともに、その裏返しの「孤独な境遇」も明らかにされた。 (時吉達也) 起訴状と検察側冒頭陳述によると、被告は以前、広告代理店に務めていたが、会社の倒産などで職を失い、昨年6月以降は生活保護を受給。震災発生後の3月15~17日、都内の女性ら4人に電話をかけ、「子供たちが寒さで震え、おなかを減らしている。義援金をお願いしたい」などとうそを言い、現金をだまし取ろうとしたとされる。 4人のうち3人からは計4万2千円の寄付の約束をとりつけていたが、振込前に犯行が発覚し被害はなか