♪びっくりする程(ほど) ちっぽけな カバン1つで 5月の雨の日 僕は東京の街におりた =「三人」(1992年) 90年5月。大学浪人中だった20歳の槇原敬之(41)は歌手デビューが決まり、生まれ育った高槻を離れた。音楽で誰かの役に立てたらいいな。JR高槻駅で、見送ってくれた母親にそっと告げた。 高校時代は音楽に明け暮れた。自分の曲を聴いた友だちが共感してくれる。それは、味わったことのない充実感だった。勉強には身が入らなかったが、音楽が仕事ならどんなに大変でも「今日は休みたい」とは思ったりしない。そう神様に誓った。 デビュー翌年に発表した「どんなときも。」がミリオンセラーを記録した。「冬がはじまるよ」「もう恋なんてしない」……。繊細な恋愛を描いた作品が立て続けにヒットし、20歳代で高額納税者番付の常連になった。気がつけば、何を食べても何を見ても「おいしい、面白い」と感じなくなっ