南部陽一郎、小林誠、益川敏英三氏の物理学賞に下村脩氏の化学賞が続きノーベル賞フィーバーが巻き起こっているさなかの10月10日、京都大学の山中伸弥教授が、ウイルスを使わないiPS細胞製作に世界ではじめて成功したというニュースが流れた。 再生医療の実現に向けた大きな一歩と報じられたのだけれど、ウイルスを使わないことがどうして「大きな一歩」になるのか、即座に理解できるでしょうか。 iPS細胞は現在進行中の科学的イノベーションとしてはもっともホットなもののひとつだが、なにしろ生命科学の最先端であり、「クローンが出来ちゃうんでしょ、すごーい。それでES細胞と何が違うんですか?」といったアバウトな理解にとどまっている人が多いんじゃないだろうか。いや、自分がそうだったのだが。 そこで本書である。一読すれば、技術的な仕組みとそれを支える生命科学のバックボーン、生命倫理問題および先端科学技術をめぐる特許争い