前任者の麻生太郎さんにくらべると、鳩山由紀夫首相は失言、放言がほとんどない。麻生さんが多すぎたからでもあるが、鳩山さんは国会答弁などを割合器用にこなしている。 戦後の歴代首相のなかで、国会論議の想定問答を事前に用意する官僚たちが、 「任せていても安心だ」 と答弁能力を買っていたのは、岸信介、福田康夫、宮沢喜一の三人だった。三人とも、上手というよりはソツがない。高級官僚出身で頭脳明晰、言葉じりをつかまえられることがなかった。 その点、鳩山さんもソツのなさはあるが、最近は発言にぶれがみられる。失言とまでは言えないにしても、気になる言い回しが時折ある。そのひとつ、衆院本会議の論戦で、自民党の谷垣禎一総裁が財政再建問題をただしたのに対し、 「あなた方に言われたくない」 と反駁したのは、不評だった。このあとの衆院予算委員会で自民党の加藤紘一元幹事長が、 「首相があんなことを言ってはいけない。野党ボケ