『機動戦士ガンダム』には、三つのバリエーションがある。ひとつはもちろんTV版、もうひとつは映画版、そして三つめが小説版だ。この三つの『ガンダム』が、原作者・富野由悠季が生み出した“原典”ということになる。 「アムロの物語」など存在しなかったTV版、「アムロの物語」を捏造した映画版。しかし小説版には最初からその意図をもって「アムロの物語」が描かれている。これが小説版を読む価値のひとつだ。 映画版において捏造された「アムロの物語」は、“だいたい”小説版でも描かれている。しかし映画版で捏造された「アムロの成長物語」の部分は、小説版二巻途中までで描かれきっている。二巻途中から最後までは、だから「アムロのその後」が見られる、という楽しみがえられるわけだ。 とはいえ、アニメ版と小説版ではかなり違うところがある。そしてその違いは、小説版の方こそが富野ワールド色が強い、という点で、富野語りには見逃せない作