月曜日、 闇。鏡に向かって恐る恐る開けた口の中。広がる空間の、向かって右奥の方。そこには、何角形とも言えない闇がある。 親知らずを抜いたのだ。昨夜のことである。 昨夜は血が止まらなかった。夜中も血は止まらなかったようで、朝起きたら歯が茶色。長年タバコを吸ってきたように歯が茶色。口をゆすいだら、茶色とも赤ともつかない濁った色の水が口から出てきた。 朝の歯磨き。それでも血は止まらない。 そんな状況だから、怖くて抜いた箇所を見れなかった。 そして今日。歯医者の最終受付時間21時に滑り込み、消毒をしてもらう。 「これは綺麗だ!良かったですね、傷口も綺麗です」 多分、僕と同い年くらいの先生が爽やかに語りかける。 「ちょ、ちょっと一旦休憩にします、ね!」と言って去っていた昨日の施術中。僕の右頬に触れる先生の腕は汗で濡れていた。 「先生、メス持ってきました」 メス!?確かに厳重に麻酔をしているから、右半