ゴールデンベア、愛称の由来 ジャック・ニクラスを初めて見たのは1973年の全米オープンだった。それまでは伝聞や映像、記事、あるいは書物の中の知識としての情報でしかなかった。全米オープンの記者会見場で、僕は、ニクラスが座るテーブルの正面の最前列に座り、腕組みをして、さあ来い、という意気込みで待っていた。 ニクラスが席についた。次の瞬間の第一声のトーンを聴いて、僕は、一瞬呆気にとられた。甲高いトーンで、ニクラスというプロゴルファーのイメージとは、程遠かったからである。でも、大切な単語には鋭いイントネーションがあり、自分の意思の強さを伝えていた。 ゴールデンベア……金熊。ニクラスは、1940年オハイオ州コロンバスに生まれ、父親の影響でゴルフを始めた。 ニクラスに、ゴールデンベアという愛称の由来を聞いたことがある。 「よくその質問をされるんだけど、いくつかのストーリーがある。1つは、60年代の初め