著者: 森一貴 鯖江駅の改札を抜けると、「めがねのまちさばえ」と書かれた台座と、ささやかなメガネのモニュメントが出迎えてくれる。 2015年10月1日のよく晴れた日。僕はそのモニュメントを見て、僕が住む街が“めがねのまち”であることを初めて知った。 福井県鯖江市。福井市の隣に位置する、人口約7万人の中規模都市だ。主要産業はメガネフレームの製造。鯖江市民の7人に1人がメガネ関係の仕事に携わっているという。 (Photo by Rui Izuchi) なんにもしなくていい。「ゆるい移住」という実験 僕が鯖江に訪れるきっかけになったのは、鯖江市が2015年に主催した体験移住プログラム「ゆるい移住」。 当時の僕は東京での仕事を9月に辞め、4月からとあるNPOで働くことが決まっていた。半年間。これだけの空白期間を経験するのは、人生で初めてだった。留学しようか、世界一周でもしようか……。考えていた矢先