「『わかんないなー』と監督は言ってます」 「『そこは覚えてないなー』と監督は言ってます」 目をキラキラさせた日本人女性ファンの、熱心で難しい質問を、通訳をとおして、かわす巨匠。 でも軽く笑顔。 私はそれを、30センチ横で眺めてた。白髪で小柄、猫背、やさしい声、やわらかい雰囲気。 おととい、月曜日の出来事だ。 ヤン・シュヴァンクマイエル。1934年、チェコ・プラハ生まれの芸術家。シュルレアリスト、アニメーション・映像作家、映画監督。 日本にもすさまじくたくさんのファンがいる、世界的巨匠。とくに女子には、コマ撮りアニメと少女の実写を合体させた長編『アリス』が人気だ。金髪青い目の美少女が迷い込む、不思議でグロテスクな世界。たまらない。 私が初めてシュヴァンクマイエルを観たのは、二十歳くらいの頃。『男のゲーム』『闇・光・闇』(両方とも、ものすごく変な、ねんどアニメ)あたりを、「これ面白いから観ると